「賭けの内容はだいたい俺が決めるけど、罰ゲームはいつも、決まってないよ」
「え……?」
となりの整った顔を見つめると、星野彗はぴんと人差し指を立てた。
「何をやってもOK。つまり、負けたやつが自分で決めんの」
「自分で……決める?」
「そ。ただし、ひとつだけ条件が決められてる」
伸ばした人差し指を、拳銃を構えるような格好でわたしに向け、
心底楽しそうに、きれいな顔面を崩す。
「そいつにとって、”ありえないこと”であること」
いまいち意味をつかめないでいるわたしに、彼は「たとえばぁ」と続ける。
「俺の場合、ジャムがすげー嫌いで、あんなもん人間の食うもんじゃねぇって常々思ってんだけど、
このあいだ賭けに負けたときは、昼飯にジャムパンを食ったわけ」


