高槻くんと手を繋いだときは気絶しそうなほど緊張したのに、
学年1のアイドル男子に抱きつかれても、わたしの心はまったく反応しなかった。
足にかかった罠を外すような気持ちで、毎回、わたしは星野彗の腕から抜け出す。
彼とふたりきりのお昼というのも、ものすごく気が引けるけれど、
高槻くんと顔を合わせるよりはマシ。
そう思って、わたしは星野彗に連れられるまま、
中庭と校舎をつなぐ外階段の一番上までのぼった。
人通りがなく、手すりに風が遮られ、でも日差しがぽかぽかと降り注ぐそこは、
なかなか居心地のいい場所だった。
「いいでしょ、ココ。ひとりになりたいときとかよく来るんだ」
星野彗はわたしと並んで階段に座り、購買で買ったパンにかぶりつく。
わたしはお母さんが作ってくれたお弁当の包みを開いて、
少し冷たい空気を吸い込んだ。


