それでもキミをあきらめない




始業前の廊下は人通りが多い。


すこし肌寒さを感じながら、何気なく通路の奥に目をやるけれど、

1学年の廊下には背の高い黒髪の彼は見つからなかった。


ほっとして窓の外に視線を向けた瞬間、星野彗の腕がわたしの肩を包む。


「ちょ、ちょっと」


横から抱きつかれ、強引に抜け出そうとすると、彼は頬をふくらませた。


「だって奈央ちゃん、こうやって捕まえてないと、どっか行っちゃいそうだから」

「な……」

「ねぇセイ……、その子は?」


教室からついてきた派手な女の子三人が、頬をひくつかせながらわたしを指差す。


「あ、わたし、2組の小塚奈央――」


大きな腕から抜けながらクラスメイトに自己紹介をしようとすると、


「俺の彼女」


星野彗が自慢げに言って、彼女たちはばっちりアイメイクが施された目を見開いた。