この集団をまとめてこの場から離さないと、朝子に迷惑がかかる。
「あ、あの、星野くん。SHR始まるまで廊下で話さない?」
思い切って切り出すと、学年ナンバー1は大きな目をぱちくりさせた。
「廊下? 俺はいいけど、寒くない?」
「平気!」
教室から出たら、より多くの視線を浴びそうだけれど、
教室で滞留した空気のなかにいるよりは、人の流れがある廊下のほうがかえって目立たないような気がした。
それに、朝子の邪魔をしたくない。
「奈央ちゃんのいるとこなら、俺はどこでもいいよ」
無邪気に笑ってわたしに手を差し出す星野彗に、周囲の女の子たちが悲鳴を上げる。
アイドル男子の、甘くて優しい仕草。
身体に染み付いているみたいに自然にそれをやってのけるからこそ、
星野彗はナンバー1と呼ばれるのかもしれない。
「うるさくしてごめんね」
朝子に小さく声をかけて、わたしは星野彗の手に触れないまま、廊下へ向かった。


