『あんた誰よ』という心の声が突き刺さる。
変身前の小塚奈央は、よほど存在感が薄かったらしい。
誰もわたしのことが分からないなんて。
愉快な気分と寂しい気持ちがごっちゃになって、頬が引きつってしまう。
それからはっと我に返った。
星野彗を中心に出来上がった輪は、いつもの2組の教室らしくない、騒がしさを生んでいる。
振り返ると、朝子は我関せずという様子で参考書をめくっていた。
何も言わないけど……きっと、うるさいと思ってるはず。
「奈央ちゃんほんとにもう、エンジェルすぎて俺のラブがハチキレそう」
涙ぐみながらわけのわからないことを言っている星野彗と、
彼が発言するたびに黄色い声を上げる女子たちに視線を戻す。


