それでもキミをあきらめない




登校してそのままやってきたのか、薄っぺらいカバンを放り出すようにして、

星野彗はいきなりわたしに抱きついてきた。

教室中に女子の悲鳴が上がる。


「ちょ、ちょっと星野くん、離して」


ただでさえ目立っていたのに、星野彗のおかげでクラスメイト全員の視線が注がれている。


「ほんとに……いたんだ」


涙声になっている星野彗を引き剥がすと、教室のあちこちからまた悲鳴が上がった。


いつでもどこでも女の子にベタベタしているから、

わたしに抱きついたところで「またか」と思われる程度だろうけど、

アイドル男子の感極まった顔が新鮮なのかもしれない。


「セイ~どうしたのぉ!」


派手なグループの女子たちが近づいてきて、わたしの席は一気に華やいだ。

ただし、わたしに向けられる彼女たちの視線は、冷ややかだ。