「おはよう、奈央」
いつもと変わらない、本人に悪気のない、つんとした表情。
クラスメイトには誰だかわかってもらえていないのに、朝子にはきちんとわたしが小塚奈央に見えるらしい。
彼女はいったい何をもって他人を区別しているのだろう、と不思議に思いながら、
わたしはなんとなく安心して、席に着いた。
周囲からの視線に、嫌な汗が浮かぶものの、
たとえ朝子だけでも、わたしを分かってくれている人がいるからか、かろうじて椅子に座っていられる。
そんなふうに、どうにか教室の一角に馴染もうとしていると、
教室のドアがぴしゃーん! と派手な音を立てて開いた。
「奈央ちゃあああん!」
金色の髪が、2組の教室のなかでひときわ輝く。


