なるべく目立たないように教室のドアを開けたのに、足を踏み入れたとたん、多くの視線を浴びた。 そしてそれは、わたしが席に着いた瞬間に、ざわめきへと変化した。 「誰、あの子」 「なんであそこの席座ってんの」 「ていうか、あの席って誰がいたっけ」 そんな声を聞きながら、心を落ち着けようと努力していると、 隣の席でいつものように参考書を広げていた朝子がこちらを向いた。 目が合って、わたしは緊張する。 「お、おはよう朝子ちゃん」 ぎこちなく笑ってみせると、彼女はぶっきらぼうに言い放った。