高槻くんは、放心したまま、電車に乗るのも忘れて立ちつくしている。 ベンチの前にたたずむ姿を見て、 胸の底に、甘い甘い毒の蜜が溜まっていくのが分かった。 真っ黒な喜びが、わたしの頬を勝手に持ち上げて、笑顔を作らせる。 「じゃあね、星野くん」 ――さようなら……高槻くん。 耳の奥でもろいガラスが砕けた音がして、 何かが、壊れていくような気がした。