それでもキミをあきらめない




高槻くんの両親は共働きをしていて、8つ離れた弟の遼くんは、

小学校が終わるとそのまま近所の学童保育で夕方まで過ごすらしい。


そして遼くんを学童まで迎えに行くのが、高槻くんの役目なのだという。


「いつもは17時すぎに行けばいいんだけど、今日は熱が出てるって連絡があったからさ」


ダイニングテーブルでお茶をもらいながら、

わたしは体温計に真剣な眼差しを向ける高槻くんをじっと見つめた。


学校にいるときとも、並木道を歩いているときとも違って、彼の表情には驚くほど感情が溢れている。


「7度4分。たいしたことないな」

「だからぁ、先生うそつきなんだよ」

「ちょっと大げさなだけで、別に嘘じゃないだろ」


絨毯にあぐらをかいている高槻くんの背中にのしかかったり、一緒に体温計を覗きこんだり、

遼くんはよっぽどお兄ちゃんが好きらしい。