電車に乗って2駅、わたしの最寄り駅の手前で降りると、高槻くんは賑わう商店街を抜け、二階建ての建物の前で立ち止まった。
大きな庭は白いフェンスに囲まれ、軒先には小学校にあるような靴箱が置かれている。
玄関前で目をぱちくりしているわたしを尻目に、高槻くんは引き戸をがらがらと開いた。
その瞬間、内側から賑やかな声が飛び出してくる。
建物の中では、20人くらいの子どもたちがフローリングの上を縦横無尽に飛び跳ねていた。
小学校の休み時間みたいな騒々しさの中に、彼は負けじと声を張り上げる。
「すいません、高槻です。遼、帰るぞ」
奥からエプロンをかけたおばさんが出てきて、高槻くんは頭を下げた。
わたしはぽかんとそのやりとりを見ていた。


