ケータイ奴隷

「本当だよ。これからも、こんな高い料金を請求されるなんて、たまらないから。なっ？」

「ええ、明日、わたしが解約手続きをしてくるわ」

なに、こいつら。なに勝手なこと言ってんのよ――。

「イヤッ、なんで解約なんかしなくちゃいけないのよ！　そんなこと一言も言ってなかったじゃないっ」

あたしはポケットのケータイを無意識におさえた。ケータイがない生活なんて耐えられない。

しかし、父はビールを飲み、母は夕飯をテーブルに並べたり、とあたしの声がまったく聞こえていないふりをしていた。

ボロボロと涙がこぼれてきて、あたしは床を蹴りつけた。それでも父と母は、あたしの方を見ない。

「無視すんなっ！」

怒りがおさまらないので、置いていたスプーンを壁に向かって投げつけた。

「ちょっと、ゆかり！」

母が止めようとしてきたが、あたしは断固戦うつもりだった。