「おかえり」

と母は腕を組んで、仁王立ちになり、あたしを見下ろしてくる。

どうも、あたしがなにかやらかしたらしい。ケータイ小説を読みかけだったが、ケータイを折りたたんだ。

「こっち来なさい」

あたしは、靴をぬぎ、おそるおそる母のあとについて行く。

イスに腰かけると、ダイニングテーブルに、バンッ、と母の手が置かれた。

「ゆかり、これを見てごらんなさい」

鼻の先に差し出されたそれを受け取ってみると、ケータイ料金の請求書だった。それを、見て、げっ、と思った。

1万2300円。

何度まばたきをしても、そう書いてある。だいぶ電話をかけるのを減らしたつもりだったんだけど、通話料がかなり高かった。

あたしはテーブルに請求書を置くと、

「え、えへへ。一万円超えちゃった……」

と舌をだしてみた。

だが、母はくすりともせず、請求書を折りたたむ。