ケータイ奴隷

「ゆかり~、お父さん帰ってきたわよ」

母がコンコンとドアをノックする。

わたしは、ゆっくりと上体を起こして、両手の指を動かした。

母がドアを開けてきたので、わたしは立ちあがった。

「また寝てたの。リビングへ降りてきなさい。お父さんが話があるって」

「はい」

とわたしは返事をする。

母は一瞬怪訝そうな顔をしたが、階段を降りて行った。

スーツを着た父が、上機嫌で通知表を見ている。

「お父さん、おかえりなさい」

とわたしは頭をさげた。

「ゆかり、すごいじゃないか。一年生のときより、全部成績があがっていて。いやあ、がんばっていたんだなあ」

わたしは父の向かいに座った。しばらく考えてから、にっこりと微笑む。

父は通知表をテーブルに置いて、今度はわたしを見てきた。


「いやな、あのときは叩いたりして悪かったな。ゆかりにお金の大切さを知ってほしかったんだ。あれから、ゆかりも反省しただろうし、明日にでもケータイを買いに行こうな」

「良かったわねえ、ゆかり」

母が手を叩いて、笑いかけてきた。