ケータイ奴隷

『ゆかりさん、わたしになにをしてくれるんですか?』

あたしには恐ろしいという感情はなかった。ただ、ケータイを使いたい、ということで頭が破裂しそうだった。

「なんでも――なんでもする! なんでもするから」

あたしは必死にそう繰り返した。

きゃはっ、きゃははっ、と子供のような、しかし老婆のようにしわがれた笑い声がした。

『なんでもっ? なんでもする!? 言った、確かに言ったあぁあ!』

そのとき冷たいものが這うように、背筋がゾクリとした。

狂ったようなケータイの笑い声を聞きながら、なにかとんでもないことを言ってしまったことに、あたしはようやく気づいた。

『じゃあぁあ……』

地を這うような声が響く。

『あなたの体あぁあ……もらいますねえぇえ』

その瞬間、あたしの体が動かなくなった。机のほうを向いて、直立不動のまま。

なにこれ、なんで動かないの!?

パニックになりながら、ケータイを捨てようとしたが指すら動かない。

そのとき、あたしは見た。机の上にある鏡に映ったあたしの姿を。