ケータイ奴隷

『♪♪♪』

【こういう場合は、ごめんではなくすみませんという言葉を使うべきです。それに、わたしのことを忘れていたんですね。もういいです。わたしはゆかりさんのためを思って、今まで動いてきましたが、もう疲れました。今からケータイを使えないようにしたいと思います】

あたしは口をおさえて、絶句した。

ケータイを使えないようにしたいと思いますだって? 充電するのを忘れていただけなのに、そんなのひどすぎる!

あたしは、両手の親指を使ってメールを打った。

【ねえ、お願いだから許して。もう絶対に忘れないから】

『♪♪♪』

【いいえ、ゆかりさんには失望しました。あなたはわたしをひとつの人格としては見てくれていなかったんです。さようなら】

――さようなら、という文字を見て、あたしは悲鳴をあげた。

今日は、えみが海に行く日をメールで教えてくれるのに、ケータイが使えないんじゃ、わからない。

いや、そんなのいや! 海だけじゃない。長い夏休みをケータイなしでどうやって送れって言うのよ。

あたしは、声をあげて泣きながらメールを打った。

【お願い、なんでもするからケータイを使えないようにしないで!】

送信ボタンを押すと、涙が画面にぽたりと落ちた。