ケータイ奴隷

家へ帰りついたときには、にわか雨にでもあったように全身が汗でびしょ濡れだった。

ぐったりとドアを開けると、ちょうど玄関の脇にあるトイレから母が出てきた。眉間にしわを寄せ、怒ったような顔であたしを見てきたので、心臓が痛くなった。

「ご、ごめんなさい」

ととっさに謝る。

「え、なによ、いきなり」

母が、きょとんとしたように言う。

「なんか怒ってるように見えたから……」

あたしが震える声で言うと、母は笑った。

「ああ、便秘が続いてるからよ。それより、謝るようなことでもしたの?」

母はわざと言ったのだろうけど、あたしはさっきしたことを見透かされたような気がして、引きつった笑顔を浮かべながら、二階へあがった。

通学カバンを床に置き、机の前に座る。ポケットから万引きしたシートを取り出すと、青いラインストーンだったことに初めて気づいた。
横にあったピンクを手にしたつもりだったのに。かなりドキドキしていたから、まったく気づかなかった。

今さら万引きした商品を取り替えにいくわけにもいかないし、あたしは袋からシートを出した。