ケータイ奴隷

二十分ほどして、ショッピングセンターへ到着すると、制服の下は汗でべっとりだった。
店内は冷房がきいていて、熱を持った汗が冷えていくのが心地いい。

あたしはエスカレーターに乗り、二階へ向かった。

女の子向けの商品を取り扱っている雑貨屋に入る。ワンタッチの付け毛と、髪飾りのコーナーを通り過ぎると、ケータイをデコるためのシートがあった。
ハートやドクロなど、色も種類がたくさんある。

あたしは、そっと店内を見回した。レジに女の人の店員が一人と、バッグのコーナーに店員がもう一人いる。


あんまりきょろきょろしないほうがいいんだろうけど、あたしはどうしても店員の動きを見てしまう。

レジにはお客が並んでいるので、バッグのコーナーの店員がどこかに行ってくれれば……あたしはそう願ったが、店員はバッグを整理しており、いなくなる気配はない。


ばっと素早くつかんで、ポケットに入れれば――そう思い、持った手がガタガタと震えていた。

どうしよう、震えが止まらない……。やっぱり、あたしには万引きなんてできないよ。
だけど、やらなくちゃケータイが止まっちゃう。ああ、どうすればいいの――。