ケータイ奴隷

あたしとりさは、手を握りあって喜んだ。もしかしたら、今年の夏はこの手を彼氏が握ってくれるかもしれない、と思うとキャーキャー騒いでしまった。

二人と手を振って別れたあたしは、通学カバンからケータイを取り出そうとする。

ゲストブックでも覗いて見ようと思ったのだが、もし彼氏ができたら、という妄想話をりさとしていたので、興奮したせいか手のひらが汗をかいていた。

だから、ケータイが手から滑り落ちてしまい、音をたててアスファルトに落下してしまった。

「あーあ」

やっちゃった、とあたしはケータイを拾いあげた。

サブ画面の下に、小さなかすり傷がついていた。よーく見ないとわからないような物だったので、安心する。

『♪♪♪』

静かなメール受信音にドキリとする。確認すると、ケータイからのメールだった。

【ゆかりさん、今わたしのことを道路かどこか固い場所に落としましたね? とても痛かったです。サブ画面の下をケガしているでしょう?】