ケータイ奴隷

翌朝。寝不足で少し頭が痛かったが、あたしは軽い足取りで階段を降りた。

「おっはよ~」

元気よく言うと、「あら、おはよう」と母が驚いたような顔をしていた。

朝ご飯を食べて、制服に着替えたあたしはケータイを通学カバンに入れた。

「いってきま~す」

とスキップしながら家を出る。

いつもの待ち合わせ場所には、りさとえみがいた。

「あっ、ゆかり、おはよう」

りさが駆け寄ってくる。

「えみに聞いたよっ、ケータイ復活したんだってね」

「うんっ」

「しかも、わたしが話した都市伝説にそっくりだってゆーじゃん! ねっ、詳しく教えてよ」

――わたしのことはほかのひとにはひみつにしてくださいね。ケータイからのメールを思い出し、あたしは目を泳がせた。

「実はさー、あたしがあんまり元気ないから、親がこっそり手続きして使えるようにしてくれてただけだったんだ~」

頭をかきながら、言う。

「えー、なんだあ。そーだったの……」

がっくりしたように肩を落としていた。

「やっぱしねー、でもよかったじゃん。ケータイ復活してさ」

えみの言葉に、あたしは満面の笑みでうなずいた。