ケータイ奴隷

放課後、りさとえみと別れて、あたしは一人で歩く。いつもならケータイでなにかをしながらそうしていたので、ひどく暇だ。

歩いていると、小学校低学年くらいの女の子が胸元からぶら下げたケータイを、慣れた手つきで扱っていたので、無性に蹴り飛ばしたくなった。

あんな小さな子だってケータイ持ってるのに、あたしは……。

さらに駆け寄ってきた友達らしき男の子もケータイを持っていたので、あたしはその場から逃げ出すように走った。

家へ帰ったあたしは、二階へ駆けあがった。制服のままベッドへダイブする。

――夏休み明けまでこんな毎日が続くの? 

いや、テストの結果が悪かったら、買ってもらえないかもしれない。もしかしたら、中学を卒業するまで……。

「そんなの絶対にイヤ!」

あたしは枕を殴りつけた。拳の形にへこんだ枕を壁に投げつける。

今もりさとえみはメールをしているだろう。あたし抜きで、なにか楽しいことをしている、それが悔しくてたまらない。

こんな惨めな思いを、どうしてあたしがしなくちゃいけないのだろうか。それもこれも、ケータイがないせいだ。

「ケータイがないと生きていけないよ……」

あたしは大の字になって、そうつぶやいた。