ケータイ奴隷

「ゆかりー、遅刻するから起きなさい!」

階下から怒鳴る母の声で目覚めたあたしは、伸びをしてから無意識にケータイに手を伸ばした。
真っ暗な画面を見て、はっとする。もう使えないんだった。

朝一番で重たいため息をついて、あたしはケータイを置いた。

あたしは中学生になってすぐに、ケータイを買ってもらった。だから、ケータイのない生活なんて小学生以来だ。

休み時間になると、無意識に通学カバンからケータイを取り出そうとしているあたしがいた。
あらためて、ケータイが生活の一部になっていたことを思い知らされる。

「ねーねー、昨日メールで送ってきた画像ってさー」

あたしの沈んだ気持ちなど、おかまいなしのようにりさとえみは話している。少しくらい気を使ってケータイの話をしないでよ、とあたしは黙ってその話を聞いていた。