ケータイ奴隷

父と母ととる夕食はとても暗いものだった。

あたしは叩いてきた父のことを許していないので、ほとんどしゃべらず、父も黙ってビールを飲んでいる。

あたしは、ほとんど食欲がなかったので、コロッケを一個とご飯を半分食べただけで、「ごちそーさま……」と席を立った。

見て見て、ケータイがないからこんなに元気がないんだよ、ということを精一杯アピールして、そっと後ろを振り返ると、母はあたしが残したコロッケをむしゃむしゃと食べていた。

ちえっ、と舌打ちをして、パソコンのある部屋へ行く。ネットにつないで、ゲスブを見てみたが、誰からも書きこみはなかった。

【クソムカツク!】とリアルに書き、あたしは二階へあがった。

使えなくなってしまったケータイは勉強机に置いている。メールも電話もできないこれは、もはやケータイとは言えないのかもしれないが、友達のアドレスやメールが残っているので、捨てることはできなかった。
そのまま電源を切ってしまう。

「あー、サイアク、あーサイテイ」

あたしはケータイをいつもの癖で枕元に置くと、ベッドでバタ足をして暴れた。