ケータイ奴隷

「でも、ケータイ持ってなかったら、ゆかりとどうやって連絡とればいいの?」

上履きを下に落としながら、りさがきいてきた。

「がんばって、説得するつもりだけど、しばらくは買ってもらえないと思う。だから、その間は、用があったら家の電話か、ゲスブに書きこんどいて。ゲスブなら、パソコンからでも見れるから」

うーん、と二人はどこか気乗りしないような返事をしてきたので、あたしは階段をあがろうとしていた足を引っ込めた。

「だって、それしか連絡とる方法ないじゃん」

「ゲスブに書きこむのはいいけど、家に電話するのは……めんどくさいかも」

りさが困ったようにえみに笑いかける。うん、とえみは申し訳なさそうにうなずいた。

「親とか出たら、いちいち名前とか名乗るのだるいんだよね。話聞いてると、ゆかりんちの親怖そうだし」

あたしは、がっくりと肩を落とした。だるいってなんなのよ、と言いたい気持ちを堪える。
ケータイだけではなく、友達までいなくなったら本当に人生の終わりだから。

あたしは二人に聞こえないように、小さくため息をついてから階段をあがった。