ケータイ奴隷

翌朝。あたしは、ふらふらと階段を降り、洗面所へ直行した。

鏡には、ひどい顔のあたしが映っている。父に叩かれた頬の赤みはひいていたが、一晩中泣いたため、目がぼっこりと腫れてしまい、ただでさえ大きくない目が自動販売機の小銭の投入口のように細くなってしまっていた。

歯磨きと洗顔をすませて、リビングへ行くと、

「おはよう」

と母が弁当を作っていた。

父はもう会社へ行っており、あたしは安心した。

とにかく目の腫れを少しでもなんとかしないと、とあたしは透明な袋に氷を山ほどつめて、冷やす。

イスに座って、そうしていると母が朝食のベーコンエッグを出してきた。

「昨日はお父さんもやりすぎたって反省していたわよ。それでね、あれから話し合ったの。ゆかりもね、友達関係とかあるだろうし、ケータイをずっと持たせないのは、やっぱりかわいそうだってことになったの」

あたしは、ケータイという言葉に瞬時に反応して、氷の袋をとった。