ケータイ奴隷

家中の物をぶっ壊しても、ケータイの解約を止めてやる! そう思ってサラダののった皿をつかんだとき、横から平手打ちが飛んできた。

それが父の放ったものだと気づいたのは、床に尻もちをついてからだった。

「いい加減にしろっ、子供じゃあるまいし。お前は、一万円、二万円稼ぐことの大変さを知ってるのか? 汗水たらして一日働いたって、もらえない額なんだぞ! 少しは反省しろっ」

頬が火傷したように熱くなり、あたしは床に這いつくばるようにして、わあわあと泣いた。

いくら泣いても父と母は、あたしの存在を無視していたので、夕飯もとらずに部屋へ閉じこもった。

あたしは枕につっぷして、泣きつづけた。明日、目が腫れてしまうと考えたが、涙が止まらなかった。

体中の水分が涙となって放出され、あたしはぐったりとベッドに横たわっていた。

――明日起きたら、全部夢だったらいいのに。

あたしは天井を見つめながら、鼻をすすった。