短編集

 


バイトに行く時、アカリがいつもこの地下通路を利用すると知っていた。



彼女は入口で傘を閉じ、濡れた階段に足を踏み出す。


パンプスの階段を打つ音が、地下通路にコツコツと響いていた。



周囲に人影がないことを確認し、そっと距離を詰めた。



アカリは私に全く気付かない。



階段の途中で追いつき――

ドンッと背中を強く押した。



アカリの体が前に飛ぶ。

悲鳴を上げる余裕もなく、彼女は階段をゴロゴロ転げ落ちた。



一番下まで落ちたアカリは、動かない。


駆け寄って、そっと仰向けにした。



「うっ……」と呻いた彼女は、気を失っているだけのようだ。


頬と額に擦り傷ができ、血がうっすら染みだしていた。



転げ落ちたのは10段くらい。


死なない程度にと思い、上段からではなく途中から突き飛ばした。