1つ仕事を終えて凌路は次の仕事の予定を優理香に尋ねる。



「さぁ、次はどこなんだ?」


「ないわ。もういいから帰って。」


「専属カメラマンはクビってわけかい?」


「ええ、それにもうあなたは謝ってくれたんだから・・・もういい。」


「それで君は前へすすめるのか?」


「ええ。ほんとよ・・・昨日だっていっしょに踊ったでしょ。
あなたに触れられても叫び声も出さないし、大丈夫よ。

それに、あなた言ったじゃない、女は嫌いだって。
そのあとも怒ったみたいに口をきかないんじゃ、仕事するのにも気を遣っちゃうでしょ。
そんな相手と仕事したくないもの。」



「それは・・・悪かった。
マスコミにもたたかれた話だから言いたくなかったけど、君と仕事をするなら真実をいっておかなきゃいけないな。

じつは、5年前・・・30才の誕生日のときに同僚や部下たちのすすめで誕生パーティーを開いてもらったんだ。
そのとき、俺には心に決めた女性がいた。
だけど・・・その女とベッドをともにしようとしたとき、彼女は言ったんだ。
『好きだといいながら、奪いにも来ないし、私の様子ばかりみてつまんない男・・・』って。

俺は君との過去から確かに女性を前にして躊躇したんだ。
だから、彼女に嫌がられていないか様子をみながら・・・って思ったら、つまらない男だといわれた。

そしてそれだけでは終わらなかった。
彼女はかぎつけてきたマスコミ相手に俺に傷つけられたまがいなスクープを提供して、結局俺は彼女に金を払うことになってしまった。
実際は、彼女が自分で服を脱いだだけだったのに。」


「その手の話ってあなたみたいな地位のある男性だったらしょっちゅうあるんじゃないの?」


「勝手に部屋に忍び込んでくるような女はね・・・ただ、彼女とは結婚まで考えていたから・・・。
まさか、あんな遊び慣れてるような発言は、ききたくなかった。」



「見る目がなかったのね・・・。」


「あんたに言われたくないよ。」


「そうね。
私はお金がないから取られる心配はしなくてよかったわ。

今日は近隣のかわいいスイーツについて取材する予定なんだけど、来てくれる気ある?」


「おぉ。やるよ。
俺、昨日楽しそうな人たちを撮っていて、だんだんカメラを持って走ってた頃を思い出したんだ。
シャッターを押す瞬間だけは、自分は自分でいられるってな。」


「カメラは裏切らないって?うふふ・・・まぁいいわ。
近隣だけど、かなりうろつくからしっかりついてきてね。」


「ああ。売れっ子ライターの機嫌をそこねないようにがんばらせてもらうよ。」