そして優理香も療養中ではあるものの、近所の店などの情報を主に文章を書いたり、写真を撮ったりを繰り返しながら本来の仕事も少しずつこなしながら、凌路との婚約パーティーの日を迎えた。


凌太とタナハシのホテルスタッフの協力もあって、アットホームな雰囲気でありながら関連企業などの凌路のビジネス客も満足できるいいパーティーになっていた。



「優理香さん、やっとお話できるのね。」


「松田さん、遅くなってしまって申し訳ありません。
思ったよりも凌路さんの知り合いの方々がいろいろと質問されてこられるので・・・体があかなくて。」


「まぁ、それは仕方ないわね。
顔の広い旦那様なんだもの。
これからが大変かもしれないわ。」


「そうですね。それは覚悟しています。
私はここのご利用の皆さんが招待客だと思ってますから、遠慮はせずにお声をかけてくださいね。」


「ありがとう。そうそう、あなたの書いた記事も読ませてもらったわ。
若い女性だけが気になるお店だけじゃなくて、私のような年寄りにも素敵だと思えるお店を調べてくださっていたのね。」


「ええ、あっ、そういっていただけるとうれしいです。
松田さんのように温泉や療養所の通の方に、そういっていただけると本当によかったなって思えます。」



松田凪子と優理香が女性誌の記事の話を中心に楽しく話していると、突然入口の方でざわめきが起こった。

そして、凌太の叫ぶ声がする。


「にいさぁああーーん!」



「凌太さんどうしたのかしら・・・えっ?
はっ・・・うそっ・・・いや・・・なぜ・・・こんなとこに・・・!」


優理香は全身震えが止まらない。
冷や汗をかき、気を失いそうになるのを凪子の前でかろうじてたえている。


「ほぉ・・・噂は本当だったんだな。
きれいになったものだ。
雑誌で見るより、本当に素敵な女性に成長したものだ。」


「ライド・・・私を覚えているの?」


「忘れるわけはない。俺は君をさらいにきたのさ。
母に会うこともできるしな。」


「えっ・・・お母さん?」


「そうだ。ナギコママ。久しぶりだな。」


「まっ・・・松田さんの・・・息子さん・・・えっ・・・!」



「さぁ、行こうか。ナギコママ・・・つもる話はいっぱいあるし、名郷優理香とは夜にたくさん楽しもうか。」


「ライド・・・おまえ・・・ここがどういう場かわかって言ってるの?」


「ああ、リョージ・タナサキとユリカの婚約パーティーだろ。
だからぶっつぶしにきてやったんだ。

過去にまだかわいがってやる途中だった女だからな。
ああ、リョージとはさっき話をしてな。
俺の部下が少しかわいがったんで、病院に連れていかれたな。
さて、優理香・・・行こうか。」