その後2人は凌路の部屋へと移動して、同じベッドに入った。

けれどまだずっと震えている優理香に凌路は抱きしめてキスする以上のことはしなかった。


「凌路さん?」


「見合いの続きなんだけど、正式に婚約しよう。
きっと君の叔母さんも喜ぶし、弟も安心してくれると思うんだ。」


「そうね。
だけど、凌路さんは本当に私でいいの?
うちは借金こそなくなったけれど、何もないし、姉も外国暮らしだし・・・。

凌路さんは弟さんの他に親戚の人たちがいるんでしょう?
その人たちは、社長にふさわしい家柄の人を望んでいるんじゃ・・・?」


「あのなぁ・・・ここは日本だし、俺は貴族でもなければ普通の実業家であって国を動かしてるわけじゃないぞ。
まぁそれは君だってご両親が旅館を経営していたんだからわかってると思うけれど、普通の親だったら本人たちの意思にまかせるっていうんじゃないか?」


「それはそうだけど・・・。
だって、規模が違うし。
ここだって、誰もが利用できる施設じゃないし。」


「確かに公共のサービスと同じにはできない。
民間にできるレベルは利益をあげなければ、負債とともに倒れてしまうからね。
儲けを出せなくては維持できない。

だから、利益をもらうかわりにできる限りのサービスをさせてもらう。
これはホテルの経営と同じようなものだね。

あのさぁ・・・婚約パーティーという名目でここの多目的ホール使って簡単な立食パーティーをしようと思うんだけど。
実際は車椅子が多いだろうけどね。
ちょっとみんなが違う日っていうのを作ってあげたくてね。」



「自分をパーティーの名目にしちゃうのね。
じゃぁ・・・私もドレスアップしなきゃね。

もちろん、長さだけ足が動くように短めで。うふっ。」


「賛成してくれるね。
よし、じゃ、明日にでも日程の調整をして、知り合いにも連絡をしよう。
もちろんこの施設を利用している皆さん全員にもだ。」


「おじいちゃんやおばあちゃんたち祝福してくれるかしら?」


「それはまちがいなしだな。
1日で大歓迎状態の名郷優理香の婚約パーティーだぞ。
問題は・・・俺がどこまで我慢できるかなんだけど・・・。
ごめん・・・なんか催促してるみたいで。」


「そ、そんなに私のこと好き?
じゃ、パーティーの日の夜、パーティーが終わってから、ここで。」


「い、いいのか?
今日やっとキスをゆるしてくれたばかりなのに・・・?
無理はしない方がいい。
それに、俺もまた泣かれて逃げられるのは嫌だ。

しかも、今度は君がほしくて仕方がないから逃げられたらダメージが大きすぎて立ち直れなくなってしまうだろうしなぁ。」


「うん、私も前に進まなきゃ。
前と違って本当に愛してる人を困らせるなんてしたくないもの。
勇気出さなくっちゃ!
でも、今日はごめんなさい・・・パーティーの日までにはがんばるから。」


「ぷっ!がんばるのは俺なのに?あはははは。」


「もう、やだぁ!寝ますっ!」


「優理香?くくくっ、ほんとにかわいいな。
俺、楽しみにしてるから。」