危険なお見合い

翌日から、優理香は朝は温泉治療とカウンセリング治療を受け、午後からは施設内でたくさんのお年寄りを相手にすることになった。


「はい、午後のアトラクションの時間はおしまいです。
これからおやつ組さんとおふろ組さんに分かれてもらいますよぉ!」


優理香は先輩介護士たちの仕事の手伝いをした。

おやつの入ったお皿を並べたり、飲み物を用意したり、お風呂の掃除やタオルの洗濯や用意まで雑用をこなした。


スタッフたちの中で優理香のことを気付いた者はいたが、凌路の紹介や優理香の働きっぷりからいつのまにか仲間として仲良く受け入れてくれたのだった。



「ふぅ!」


「お疲れ・・・缶コーヒーだけどどうぞ。」


「凌路さん、あっ、いえ、社長・・・いろいろ気にかけていただいてすみません。」


「ぷっ!今さらかしこまる必要もないって。」


「でも、働かせてもらう以上、みんなと同じでないと!」


「真面目だね。それに・・・働いてる姿がとてもきれいだ。」


「べ、べつに奥さんにしたからって、おべっか使わなくてもいいんですからねっ!」


優理香はそういうと、真っ赤な顔をして庭へ出て行った。


「くくく。この程度で真っ赤になるなんて、ほんとにかわいいヤツ。
(もっと早く会いに来ればよかったな。ライドなんかに触れられる前に会っていれば、俺にもあたりまえに家庭が持てて子どもが庭を走り回ってたりするんだろうな。)」


庭に出た優理香は、両手で頬をおさえ呼吸を整えていた。

(襲われたときとぜんぜん違うどきどき・・・だわ。
ちょっと感想言われただけだし、ものすごくほめられたわけでもないのに。
お見合いのときよりも、胸がどきどきしてこんなの初めてかも。)


「ふふふ、若いっていいわね。
殿方の一言にどきどきわくわく、びくびくほかほかになっちゃうの。」


優理香がびっくりして振り向くとそこには、真っ白に銀色まじりの髪をした年配の女性が日傘をさして立っていた。


「す、すみません。おさんぽ中でしたか?」


「ええ。さっきのはこの施設の代表よね。
あなたのことが好きなのね。
ずっとあなたの仕事ぶりをながめていたわ。」


「えっ?凌路さんが・・・私のことをずっと?」


「あら、代表をお名前で呼ぶってことは、もういいご関係なのかしら?」


「あっ・・・あの、私・・・じつは、凌路さんと結婚したばかりで。」


「まぁそうだったの。新婚さんだったのね。
それにしては、まるで出会ってまだ1週間くらいの恋人みたいな関係に見えたわ。」


「そうですよね。
私、ずっと・・・今もなんですけど、男性恐怖症が治ってなくて男性ときちんとお付き合いしたことがないんです。」


「まぁ・・・。」