お見合いの世話を必死に頼んでいるのは、棚崎凌路35才 独身。


大学を出たばかりのときに父を亡くして、ホテルグループのトップになった。

しかし、過去に女子高生にレイプまがいな行為をしたことをずっと悔いていたこともあり、仕事を覚える方が大変だったこともあって、優理香のその後を知ることもできなかった。

そんなとき、ホテルにあった旅行雑誌で売れっ子ライターとして名郷優理香の名を見つけた。


(やっと・・・見つけた。
しかも、こんなに美人だったんだ・・・。)



優理香の叔母は優理香の母の妹で、以前は温泉旅館の仲居をしていたが、それからサラリーマンの夫と結婚して、離婚をし、今は都心の料亭の主人に見初められて再婚して女将を任されている。


「あの、1つ質問させてください。
優理香さんは今、お姉さんの彩加さんとはよく交流されているんでしょうか?」



「あ・・・彩加とはね、ほとんどつきあいがないの。
昔からね、彩加と優理香は相性が悪いっていうか・・・彩加の方が妹を野暮ったいとか華やかさがないとかって毛嫌いしていたのよ。

それで両親が亡くなったことをきっかけに、アメリカに行ってしまったんだけどね・・・。」


「何かあったんですか?」


「アメリカでモデルになるとか言っちゃって飛び出していったんだけどね・・・つい最近、手紙と写真が届いたのよ。
これなの。」


手紙にはこれが私の実力なのよ・・・と書いてあって、大きな農場で子どもと芋を引き抜いているほのぼのした写真が入っていた。


「これはこれは・・・。」


「彩加は大きなことばかり言う子だったけど、どうやら大きな農場主に見初められたようなのよ。
それで、今は子どもを産んで家族みんなで毎日大規模農場をやって大変だって知らせてきたのよ。

大きなの意味はちょっと違ったけれど、彩加は彩加なりの大きな幸せを見つけたのよね。
だから、彩加はもう大丈夫なんだけど・・・問題は優理香の方ね。

いちばん男の子と遊びたい時期に、本ばかり読んでいたし、名郷観光ホテルが倒産したときに父親が蒸発してしまって、母と2人で何とかしようとしたけれど、温泉が急に出なくなっちゃったでしょ。
だから母親は体を壊して寝込んでしまって、あの娘は大学をやめて看病していたけれど、結局借金を持ったまま母親が亡くなったの。

それからいろんなアルバイトをしてたみたいなんだけど、私もその頃はおはずかしいんだけど、私生活がボロボロだったから、援助なんかしてあげられなくてね・・・。
だけど、あの娘は強いから、今は立派な売れっ子ライターなの。」