美沙子の住まいまで到達すると、美沙子が涙を浮かべながら優理香を迎え入れた。


「優理香!もう大丈夫よ。
誰も取り次がないから。叔母さんとこには変な男は寄せ付けないからね。
かわいそうに・・・。」


凌路はライド・フォン・ディナールが日本に来ている話をした。

「まさか・・・あいつが優理香にそんなことをしていたなんて!
許せない!」


「凌路さん、ライドって知ってるの?」


「ええ、ライドはうちのライバル社が雇ったコンサルタント業務をしていた。

狙われた会社のトップは何かしら小さな弱みから、ずるずる落とし込まれて経営不振になったり、自殺に追い込まれたりするんです。

ある意味パパラッチよりひどいかもしれない。
うちの親父も狙われて・・・母といっしょに逝ってしまった。」


「どうして優理香がそんな男と出会ったの?」


「たまたま部屋の清掃をしていたところを、女癖の悪いライドに捕まってしまったんです。」


「女性従業員は2人~3人のチームで働いていたはずなのに、襲われたときはひとりで、たまたまもうひとりが早く帰ってきたから、なんとか犯されずには済んだものの、見つけた従業員の証言で、服を着ていなかった状態だったから・・・クビになったらしいです。」


「そんなことが・・・優理香は余計に恐怖症になってしまうはずね。」


「うっ・・・おばさん・・・私どうして・・・。」


「君は、スウィーツ王子に遊ばれてしまったみたいだ。
君がいちばん会いたくない男まで用意していたんだからな。」


「はっ・・・あの・・・あの男が来てるって・・・。」


「大丈夫だ、君は会う必要もないし、俺たちが君を守るから。」


「私を守る?」


「ああ、まさか君の男性恐怖症の一番の原因になってる男がライド・フォン・ディナールだとは知らなかったけど、わかった以上俺は君を絶対守るから。」


「どういうことなの?」


「俺の仇もあいつとあいつの会社なんだ。
親父が死んでしまうようにしたのはあいつだ。

あいつのせいで、まだ若かった俺がホテルグループを継がなくてはならなくなったのと、弟がバカやっていっぱいいっぱいになっていた俺が君のせいだと君を襲ってしまうきっかけになってしまった。」


「そんな・・・ひどい人だったんだ・・・。」


「あのときとはもうキャリアも見る目も養ってきた俺は、もう負けないから。
あいつが日本をうろついているなら、なおさら、気を引き締めていかなきゃな。
弱みをみせれば、すぐにつぶされる。

あいつのやっていることは犯罪なんだから、今度はこっちから尻尾をつかまえて叩かなければ!な。」