桧垣はそういうと、一瞬ニヤリと笑みを浮かべた表情をした。

「あなたが未成年のとき、ちょっとした誤解で現在のあなたのカメラマンである棚崎凌路さんに襲われかけたことがありますね。」


「えっ・・・ええ。でもそれは誤解で、ご家族を思って脅しをかける相手を間違えたというのは、すぐに弟さんが声をかけてくれたので、大事にはなりませんでした。」


「そうですね・・・けれど、女子高生にはびっくりした体験だったんじゃないですか?」


「そ、そりゃ・・・びっくりはしましたけど、謝って出ていかれましたし。」



「そうですか、あなたの中ではそれは整理できたことなんですね。」


「ええ。」



「でも、あなたの実家が倒産して、あなたがホテルマンとして客室係をしているときに、あなたはライド・フォン・ディナールというアメリカ人に襲われて、同僚の声でライドが逃げ出して助かったこともありましたね。」


「えっ・・・ええ。」


「そのときは意識がなかったとききましたが?」


「あの・・・言いたくありません。」


「放送はしませんが、できれば答えてほしいんですけど・・・」


「私は目が覚めたあとで、解雇されて・・・ほんとに私自身はわからないんです。」


「そう、あなたは同僚に助けてもらえたものの、服を着ていなかったから解雇された。
・・・と、ホテルの上司にきかされましたね。」


「はい。だから、また職をさがしました。」


「有名になったら、またライドが追っかけてくるとは思いませんでしたか?」


「そんなことは・・・。今まで追われていませんし。」



「じつはね・・・ライドがここに来る予定なんですよ。」


「えっ・・・えっ、ええっ・・・」


「あなたの記事を見て、うれしそうにしてましたよ。」


「そんな・・・。」


「彼はあなたに一目惚れだったらしいです。
そして、彼は一流会社の専務という地位です。

決して、苦労はかけないと言っています。
会ってあげたらいかがですか?

あ、もう着いたらしいですよ。」



「あ・・・あっ・・・い、いや・・・。」



「桧垣紗緒!スウィーツと男は関係ないはずだ。
ここで放送は終わりだ。

貴様は彼女を弱らせて、悪いことをたくらんでいるようだが、彼女はすでにそこのところは病気なんでな。
俺が連れて帰らせてもらうぜ。
これは、彼女の叔母さんの許可をもらっているから、何といおうが関係ないぞ。」


「強姦未遂男がナイト気取りですか?」


「何とでも言うがいい。
俺は何を言われてもいいが、彼女はおまえも半径3m以上は近づけないほど男性恐怖症だ。

イヤラシイ考えのアメリカ人にもよく言っておくんだな。
ストーカーなんかしたら裁判起こしてやるからな。」


凌路は意識朦朧としている優理香を奪うようにかついで、車で叔母の料亭まで車を走らせた。


(恐怖を与え続けてはいけない・・・何とかしないと。)

「しっかりしろ。あいつの手だ。
いやらしいヤツがきても、俺が守ってやる。
もう、君に怖い思いをさせないから、気をしっかり持つんだ!」