30分ほど優理香は凌太に社会人になってからどう過ごしていたか根掘り葉掘り聞かれたが、優理香は過去の話を笑ってこなしていた。
そして、凌太に秘書から電話がかかり、大きな取引先の用事だといって夕食会は終わった。


「すまないな・・・弟がつつかれたくない話題をたくさんふってしまって。」


「ううん、最初に謝ってくれたせいもあるけど、凌太さんって昔もそうだったけど、明るい人だからこっちも暗くならずに、いい調子でしゃべってしまったくらい。」



「桧垣の番組でもそのくらい笑ってるといいと思うな。」


「えっ!?」


「君はまだ相手が男だとかまえているからな。
まぁそのくらいの方がいいんだろうとは思うけど、ずっとそんな感じで笑顔も作れないまま続くとものすごく疲れるだろう?」



「無理です。
疲れたって、私・・・まだ誰も信じられない。
自分の身を自分で守れないんだもの。

桧垣さんとの対談だって好きで頼まれたわけじゃないもの。
私の記事とダブるところがあっては困るから、交渉中にあちらから交換条件つけられただけだし。」



「なんだって・・・。(桧垣のヤツ、何か弱みネタをふりまわすつもりだな!)」


「生放送じゃないし、編集もできるし、嫌な質問のところはやめてもらえばいいですし。」


「当たり前だ!
あいつ、君にとって嫌な質問ばかりしてくるかもしれない。
何があっても、悲しい顔をしたり、泣き顔するな。わかったな。」


「いくらなんでも自分の番組で、そんなひどいことするかしら。」


「凌太を相手にするよりかは、つらいかもしれないぞ。
俺が知ってるあいつならな。

とにかく、君は体調を整えて、何にも動じることなくマイペースにがんばることだ。」



「ええ、そうするつもりよ。
でも・・・なんで急にそんな私にアドバイスするみたいな言い方するの?」


「ん?ああ、仕事仲間へのクセというか・・・がんばってるヤツとかその人なりに悩みながらももがいてるヤツがいたら、応援したくなる上司って感じだな。」


「そうですか。やっぱり、ホテルタナハシのトップだっただけありますね。
私は、誰かといっしょに仕事をしていても、ライターは私だけだし、他のスタッフは会社が契約してきてもらってることが多いから、守ったり守られたりなんてことはなかったなぁ。

あの・・・もうほんとにカメラマンしてもらわなくてもいいですよ。
お見合いのことは、叔母さんにもういいっていっておきますから。」


「まだ!契約は1か月はやらせてもらう約束だし、とくに出版社からクレームもないようだから、まだクビにしなくてもいいだろう?」


「でも、ホテル経営の方がきっと、凌路さんは必要な気がします。」


「そうかな・・・まぁ、もう少しだけがんばらせてくれよ。」


「ま、そこまでおっしゃるなら・・・。」