取材が終わって優理香はスウィーツ王子こと桧垣紗緒(ひがきしゃお)のところに行って見学させてもらっていいかお願いにいった。


「桧垣さん、こちらの取材は終わりました。
で、できましたらこのあと店長と対談される番組をスタッフさんのおじゃまにならないところで見せていただきたいのですが・・・。
だめですか?」


「ああ、かまいませんけど・・・1つこちらもお願いさせていただいていいですか?」


「な、なんでしょうか?」


「次の僕の対談相手になってほしいんです。
今、女性に特に人気のある売れっ子旅ライターの名郷優理香さんと話がしたいです。」


「私なんかテレビに出ても数字が取れないんじゃないですか?」


「そうかな?雑誌とか旅日記とか読ませていただきましたけど、女性目線のいい文章だし、宿についての目の付け所なんか男ではわからない部分がとても多いです。

それに最近は僕の仕事まで脅かされる始末ですからね、ここは僕のライバルとしてもぜひ出ていただきたいんです。」


「そうですか・・・桧垣さんがそこまでおっしゃるなら、がんばってみようかしら。」


「ぜひ、がんばってみてください。お願いします。」


「はい、わかりました。」



優理香は桧垣の対談番組を動くスタッフの後方から見せてもらうことにした。

凌路もカメラはしまって優理香といっしょに桧垣の番組を見学しながらカメラマンの動きを見ていた。


桧垣はまず対談の内容のチェックと会話練習をまじえながら、フリージアの店長とパティシエの重鎮3名に話をきいていた。
そして本番になると、美しいケーキを撮りながら店の歴史や最近のお客の状況などを店長にきき、パティシエには今のおすすめ品の工夫しているところや、苦労話。

年代によってどういうスウィーツを提供したいと思っているかなど、質問して番組を終了した。


「短い番組なので、終わってみたらあっという間だったでしょう?」

桧垣が優理香がお礼を言うよりも早く、そう話しかけてきたので、優理香はびっくりしながら、


「いえ、短くてもテレビ番組ですから、文章よりもかなり内容が掘り下げられていますね。」


「ええ、文字にすればページ数に制限がありますけど、テレビでは多めに撮って編集ですからね。
名郷さんと対談するときは2倍の時間はいただきたいですね。

そして放送するのは30分・・・ですがね。」


「まぁ・・・それはお上手ですか?」


「いいえ、私がきいてみたいことがたくさんあるんですよ。」


「それは光栄ですね。
では、そろそろ私たちは仕事を片付けないといけないので、失礼します。」


「じゃ、来週にまた連絡します。
お疲れ様でした。」


「はい、お疲れ様でした。」