『日高、外、見てみて』


「外?」



言われるがまま、立ち上がって部屋の窓を開けて外を見た。



「わあ」


『月、満月だろ』


「うんっ、綺麗だね」



高橋くんも今、遠くでこの同じ月を見上げてるんだと思うと、すごく胸がキュンとした。


ロマンチックだなって、すごく思った。


通話を始めて、どれくらいの時間が経ったのだろうか。
ふと時計を見ると深夜の2時を過ぎたところだった。


もう結構な時間話してたんだ……。


どうりで周りの家の灯りがついていないわけだ。



「ふ、ふわああ……」


『あくび?』


「うっ、ごめん」



不意打ちに出たあくび。
なんでこのタイミングででるかなあ。



『もう寝る?』


「ま、まだ大丈夫だよ」


『強がらなくてもいいよ』



クスクス笑う高橋くんに、私は緊張を解けない。


違うんだよ。私がまだ、高橋くんと話していたいんだよ。

まだ、付き合えるよ。高橋くん、だから……。


……でも、その想いは言葉にできなくて。



『おやすみ、日高。付き合ってくれてありがとな』


「ううん、おやすみなさい……」



切られた通話。
画面の4時間14分の文字。


欲張りだ、私。
少しだけ、あと少しって思っていたのに、まだ、まだ少しって、どんどん延長されていってた。


初めての恋だから、わからない。
未知の世界に飛び込むのは、怖い。


だけど、高橋くんに恋することはやめられそうにない。


好きだなって心が叫ぶの。



おやすみ。

だけど今日はあまり眠れそうにないや。



高橋くん、君の不安を少しは取り除くことができただろうか。


目標に向かって頑張ろうね。

みんなで、一緒に。