わかい石工は、一言も返せませんでした。しかし、老婆の悪態の合間をついて、おずおずと尋ねてみました。

「で、…母は今…?」
「病は幸いそこまで広がらなかったけどね、食べ物がなくてみんな出ていった。あたしは蓄えを食べてたけど、働くあてもない後家だろ、だから、あのひとには出ていってもらったね。逃げた息子をあてにしな、あたしには息子もいないんだから、あんたがまだましさって。そしたら黙って出ていって、それっきり。あんたが知らないなら、どこかで行き倒れているかもね。骨も拾われずにさ」

老婆は嵐のようにまくしたてると、石工に唾をはきかけてばたんと家の扉を閉めてしまいました。

石工はひざまずき、初めて母親のために涙を流しました。舌は、母のスープを恋しがり、からからに渇いていました。

「ああおかあさん!今はどこにいるのですか!ぼくを許して!ぼくも連れていって!そばに…」


すると、ポケットの中でなにかが動きました。取り出すと、あの玉の破片が、かすかに動き、音をたてているのでした。それは、まるで人間の頭蓋骨のようで、優しいお婆さんがスープを煮込みながらつぶやくような声でささやくのでした。


「…もうわたしも年なのだら、わたしが死ぬまであと少しそばにいておくれ…」 (終)