「まあ、うれしいわ」
病的に青ざめた彼女のほおに、ぽっと赤みがさしたように思われました。
「実は、わたくしたちのために、記念碑を彫ってくださるかたを探しているのです。なかなかこれといった方にご縁がありませんでしたけれど、あなたのように素晴らしい腕をお持ちのかたなら、きっと父−市長ですの−も喜びますわ。」

この願ってもない話に、石工がどんなに喜び、胸を弾ませたか、それは彼にしかわかりません。

(ツキがきたぞ!まさに「かあさま」、様々だ!)

艶やかな亜麻色の髪を風になびかせて歩く乙女に導かれ、石工は市長の邸宅に案内されました。市長は威厳のある重々しい口ぶりで、石工をぜひ雇いたいと即座に述べたものです。


それから毎日、彼は仕事に打ち込みました。最高級の大理石とのみなどの道具一式を用意され、助手も何人か雇われました。依頼された作品は、街の華々しい繁栄の記念碑でありました。のみをふるう石工の傍らには、いつもあの可憐な令嬢がしとやかに作業を見守っており、彼が休憩に入ったと見るや、甘くとろけるような砂糖菓子や、脳に心地よい刺激を与える飲み物を差しだし、熱い視線を投げ掛けるのでした。