入部したての頃、佐紀は、
野村コーチに訊ねた事があった。
「高校と大学のバスケットは、
どこが違うのですか?」
すると、コーチは、
「ハハハ、
バスケットはバスケットだろう。
バスケットに、変わりはないさ」
そう、笑って言った。
しかし、佐紀の顔を見て、思い直したのか、
「そうだな、
スピードが違う、パワーが違う、
でも、一番違うのが、必死さ、かな?
時々、
こいつら命懸けてんなって、
思う時があるからな」
それを聞いて佐紀は、以前、
大学生と行なった合宿を思い出した。
スピードもパワーも遥かにに上だったが、
それよりも、プレーに対する貪欲さに、
驚かされたものだった。
そして入部して、
いざ、上級生と練習してみると、
簡単に、当り負けしてしまう。
佐紀は、自分の未熟さを痛感したのだった
チームは現在、2部で低迷していた。
以前は、1部にいた事もあったらしいが、
今は、2部の下位にいた。
チームの目標は、1部昇格だった。
チャンスは、何回かあったようだが、
1部の壁は厚く、
全て跳ね返されてしまっていた。
だから、それは、悲願でもあった。
皆は“1部昇格”を合言葉に、
練習に励んでいた。

