「いらっしゃいませー!」
駅の近くの、コンビニ店員が言った。
隣の店から、僅かながらに牛丼の匂いがもれる。

俺は、コピー機を使う素振りをなんとなくすると、風のようにタウンワークを掴んだ。
あからさまにタウンワークの場所に向かうと恥ずかしいからだ。

目当ては、25歳。
見経験者okで、駅から近い場所・・。

時給1000円・・2駅先か・・。
ホールスタッフは、嫌だな・・。
そんな事を思いながら読む。

おっと!
店員の視線に気付く。
なんで、その場で読んでるんだ俺!
少し恥ずかしくなって、ジュースが売られてるコーナーに移った。
冷蔵庫を開けると冷気が鼻をつく。
コーラにしようか、ヘルシヨウォーターにしようか迷う。

「日給一万円・・送迎つき・・。」
「いらっしゃいませー!」

冷蔵庫を開けながら迷うのが俺の悪い癖だが・・店員のいらっしゃいませと、店内のBGMの狭間に何か聞こえた?
「日給一万円、送迎つき。20歳から・・」
「は?何!?」
やっぱり、聞こえる!


どこからか、求人情報が聞こえる!?
「日給一万円、送迎つき。20歳から、見経験者可。研修あり・・。」
どこからだ!?

「アットホームな職場・・だよ?」
「な、なにやってるんですか?」
奴だった・・。
ジュース売り場の缶ジュースの間から、目がチラホラ見える。
なんと、冷蔵庫の中で求人情報を出していたのだ・・。

「君、美味しそうだね。」
「は?」
「いや、君みたいなマイナスオーラに寄って来るからさぁ、アイツらは・・」
「アイツらって?」
「とにかく・・」
「とにかく?」
「俺をここから出してくれないか?」
「出られないんかい!!」

俺は店員さんにトイレを借りるよう断りを入れると、こっそり従業員通路から冷蔵庫に入った。
見ると・・あぁ、なるほど。
冷蔵庫を内側から開ける為のドアノブがなく。
外側から鍵が掛けられていた。
一体誰が?

「少し気を抜いた瞬間、『しゃわせ』にやられた!あのヤロウ!」
「しゃわせ?」
「上の奴らが『しゃわせ』って、呼んでるんだ。ここら辺にいる『妄霊(もうりょう)』だ。俺はそいつを追ってきたんだ。今はいないみたいだが・・」
「はぁ?」
「気配はしないが、場所を変えよう。店員だってグルかもしれん。」
そう、言われるがままコンビニを出た。