「千秋さま、他にいた犯人候補はどなたでしたか?」
「えっと…
料理人だった…ような」
「ええ、そして…
もうお一方いらっしゃいましたよね」
…もう一人…?
と、再びあたしは小首を傾げると。
「…千秋さま」
ふいに突然、あたしの目の前に
その顔が、ずい…と近づいてきて。
「え、…」
なんて、あたしは素っ頓狂な
恥ずかしい声を漏らす。
ち、近い近い近い…!
もう、キスされるんじゃないか
ってくらい近づく顔に。
あたしの心臓は、破裂しそう。
ふわり、と微かに香る花の香りが
あたしの鼻腔をくすぐり、
それだけで酔いそうなほど。
そして、彼はあたしを見つめると、
す…、と耳元まで移動して。
「『貴方は、とても美しい女性だ。
彼の秘書にはもったいない』」
どうですか、これでお分かりでしょう。
と、囁いた彼に、
もはやあたしは今にものぼせそうで。
だけど、その言葉で
あたしはようやく答えにたどり着いた。


