「早くしなさーーーい」


ママの声が下のキッチンから響く。


「はーーーーい」


同じくらいの大きさで返すけど、まだまだ下には降りられない。


あたしは、自分の部屋のドレッサーの前で制服のリボンと格闘中。


この、ワインレッドの、ふっくらとしたリボンがかわいいから、この制服が着たくて受験したようなものなんだから……ってことにしてるんだから。表向きは。