春子は礼士にそう言って、そして太田部長にも軽く会釈して退室を促した。

「そうだね。ここからは、彼女達しかいてはならない世界だ。

…栄光の、稲月高校美術部員しか。」

「…グスン。わ、分かったわ。

でもマジックナイフだけは、キチンと返却してもらいますからね。」

そうして、春子と礼士、マジックナイフを回収した太田部長は、その場から退散し始めた。

第二美術室の扉前まで来た時、誰かがその扉付近に、恵と静を取り囲む美術部員達の輪を遠目で眺め、一人立ち尽くしていた。

京子だった。

春子は、すれ違いざまにボソッと一言、彼女に言った。

「…こういう結末じゃ、駄目だった?」

それに対して、京子は何も応えなかった。

ただひたすら、その輪を眺め続けていた。

春子も、特にそれ以上は何も言わず、第二美術室から退室した。