平助が僕を引っ張り、そのまま部屋を出る。

ところで、僕の拒否権は?

多分、言ったところで無駄だろう。

小走りで、屯所の門の方へ向かう平助は、ほぼ犬。

そんな風に思っていると

「ちょうど、沖田も帰って来たみたいだな。」

原田がそうつぶやいた。

門の方を見ると、沖田達一番隊が入って来る時だった。

もちろん、気怠そうな黒猫の姿もあった。

黒猫!

と、呼ぼうとしたときだった。

とても、強い気配がして思わず振り返った。

そこにいたのは、一羽の烏だった。

その烏は、僕と目が合うと飛び立ち、沖田の方へ向かっていった。

多分、黒猫も気づいたのだろう。

眠そうな顔から一転して、真剣な顔になった。

そして、僕を見付けると近づいてきた。

「神季様………っ!」

何か言おうとしていた、黒猫の目が見ひいらかれる。

何かついているのかと思い、顔に手をあて気付いた。

あるはずものが無いことに。

「包帯巻くの忘れてた。」

「馬鹿……。」

黒猫は深くため息をつき、他の隊士から見えないよう、前にたってくれた。

本当に申し訳ない。