「よう。紅河!大活躍だったんだって?」
「五十人相手に一人で瞬殺したと聞きましたよ」
「お疲れさまだな」
大阪から帰ってきた、永倉、沖田、斎藤。
「あぁ後、壬生寺で遊んでいる子供達が、白髪のお兄さんが怖い人たちから守ってくれたと言っていました」
「甘味屋の女将も言っていたな。随分と礼を言っていたぞ」
彼等が大阪に行った後、紅河は実に大忙しだった。
不逞浪士の相手をしたり、泥棒を捕まえたり。
今まで仕事が無かった分が、一気にきたかのようだった。
「そんなことはありませんよ。話が誇張されているようですし」
浪士の相手をした人数が二倍以上跳ね上がっている。
「其れに皆さんの方がお疲れでしょう。
力士達とお戯れになったと」
紅河は敢えて戯れと言った。
実際は、乱闘騒ぎであった。
後の世で言われる、大阪力士乱闘事件である。
「まぁな、任務はどうってこと無かったしよ」
「偽物はしっかり捕まえましたから」
「其れより俺は、不逞浪士に襲われた事が気になる」
「斎藤、どう言うことだ?」
「俺たちが大阪に行ったその日に襲われている。しかも、組長がいない隊をだ」
「は?其れが?」
永倉は訳が分からず、話に着いていけない
「尾行では無く、待ち伏せていました」
尾行されていたなら絶対に気付く、と紅河が頷く。
「私も二人に同じ、ですね」
「だから、何がだ?」
唯一、永倉だけがわからない。
「副長に報告は?」
「待ち伏せされた事までは、話しました」
「だから、何が気になるってんたよ‼︎」
遂に無視され続けた永倉が叫んだ。
三人は永倉を見ると、溜息をつく。
「……何だ、その溜息」
「此処では何ですから、私の部屋に来て下さい」
彼等が話していたのは、広間の一角。
此処では、話を聞かれる恐れがあった。
対する紅河の部屋は、離れにある。
其処には、普通隊士は近付かない。
声の大きさと、気配に気を配っていれば心配は無い。
「ついでに、甘味屋の女将から貰った団子があるので食べますか?」
「食べます‼︎」
沖田は即答だった。