唯一、例外なのが。
家族と、家族と言ってくれた、仲間だけなのだ。
「私を動かしたいならば、それに見合う対価を払え」
無償で動くなど、この私の誇りが許さない。
新撰組だって、彼らだって対価を払った。
春の夢と言う、何物にも得難い宝を。
彼らは紅河に払ってくれた。
だから紅河は、彼らと自分の為に力を尽くすことを決意した。
「紅河殿の望むものを。紅河殿の望みを対価に」
「………その言葉、二言はないな?」
「お前の望みは何なんだ?新撰組か?」
静かに目を閉じると、紅河は微笑った。
「家族と、共に生きること」
『今日は、紅河の好きな草餅を作りましょう』
『紅河。生きろ……そして、彼を恨まないでやってくれ』
『よろしくね、紅河』
『そばにいさせてくれ』
『君は一人じゃない。仲間がいる。家族がいるぞ』
ただ、共にいるだけで良い。
思いの外、心地よかったんだ。
家族という存在が。
「二言は、ないだろう?」
「ああ、ない」
「何だ、人間らしいとこもあるじゃないか」
「人は、」
噛み締めるように、紅河は言う。
「人でしかない。鬼でも修羅でもなく。人は、人だ」
喜びも、悲しみも、憎しみも、愛しみも。
人だから、感じることだから。
「くくっ。その考えには賛同だ」
家族を守りたいと、家族を大切に守りたいと思える私は。
______まだ、人なのだ。


