これは、面白いかもしれない。
菁河は塀の上に腰を下ろした。
「この前はお宅にお邪魔をしたね」
沖田と斎藤の鋭い視線。
普通の者なら、腰を抜かして怯えるに違いない。
生憎、菁河は普通の者ではなかったが。
「紅河も世話になった。礼を言うよ」
「あなたは何者です」
慎重に沖田が尋ねた。
「紅河の兄だよ。あの子は何も言ってなかったかな?」
沖田と斎藤は黙り込んだ。
自分たちは、紅河のことを何ひとつ知らない。
今となっては、本当に真名であったのか、偽りの容姿ではなかったのか、それすらも確かめる術はない。
彼女は、何一つ話してくれなかったけど、嘘は一つも付かなかったと信じるしかできない。
「ふぅん。紅河は隠し事が多いから。嘘も上手いしね」
菁河は上手く、二人の動揺を突く。
紅河は、本当の紅河は誰にもわからない。
巧妙に、幾重にも防御線を引いている。
それが、ただ菁河の掌で踊り続ける莵毬と違うところ。
弱さを見せていながら、実に強かだ。
彼女は莵毬を守ろうとしながら、その実‘‘見殺し”にした。
自分の存在に気付いていながら、敢えて黙殺した。
紅河の弱点は、母親と莵毬。
だが彼女は、いとも簡単に莵毬を切り捨てた。
多少の心理的衝撃にはなったものの。
まさか、ご褒美の方で壊れるなんて思っていなかった。
そういう意味では、莵毬は弱点なのだろうが。
だから紅河は面白い。
想定通りでありながら、想定外なのだ。
「確かに紅河さんは何も話してくれなかった。けれど、紅河さんを信じていることに変わりはありません」
「俺たちは仲間を信じる」
「…………っはは」
何かを堪えるような顔をして、しかし堪えきれずに菁河は吹き出した。
「はははははっ!くくっ……」
菁河は塀の上に腰を下ろした。
「この前はお宅にお邪魔をしたね」
沖田と斎藤の鋭い視線。
普通の者なら、腰を抜かして怯えるに違いない。
生憎、菁河は普通の者ではなかったが。
「紅河も世話になった。礼を言うよ」
「あなたは何者です」
慎重に沖田が尋ねた。
「紅河の兄だよ。あの子は何も言ってなかったかな?」
沖田と斎藤は黙り込んだ。
自分たちは、紅河のことを何ひとつ知らない。
今となっては、本当に真名であったのか、偽りの容姿ではなかったのか、それすらも確かめる術はない。
彼女は、何一つ話してくれなかったけど、嘘は一つも付かなかったと信じるしかできない。
「ふぅん。紅河は隠し事が多いから。嘘も上手いしね」
菁河は上手く、二人の動揺を突く。
紅河は、本当の紅河は誰にもわからない。
巧妙に、幾重にも防御線を引いている。
それが、ただ菁河の掌で踊り続ける莵毬と違うところ。
弱さを見せていながら、実に強かだ。
彼女は莵毬を守ろうとしながら、その実‘‘見殺し”にした。
自分の存在に気付いていながら、敢えて黙殺した。
紅河の弱点は、母親と莵毬。
だが彼女は、いとも簡単に莵毬を切り捨てた。
多少の心理的衝撃にはなったものの。
まさか、ご褒美の方で壊れるなんて思っていなかった。
そういう意味では、莵毬は弱点なのだろうが。
だから紅河は面白い。
想定通りでありながら、想定外なのだ。
「確かに紅河さんは何も話してくれなかった。けれど、紅河さんを信じていることに変わりはありません」
「俺たちは仲間を信じる」
「…………っはは」
何かを堪えるような顔をして、しかし堪えきれずに菁河は吹き出した。
「はははははっ!くくっ……」


