山崎さんが間者でありませんように…… 「さすがは壬生狼。鋭いな」 とある店の屋根の上にたった人影。 深く被った衣の下から整った顔が僅かに見える。 びゅうと風が強く吹いた。 風は被った衣を吹き飛ばし、男の顔が完全に現れる。 その、顔は。 山崎丞。 山崎はするりと開いた窓に身を滑り込ませる。 彼が入った店の名は。 『池田屋』 大きな嵐の気配が、すぐそこまで迫っていた。