【羽珠side】
氷がたっぷり入ったキンキンに冷えたオレンジジュースをカラカラ混ぜる。
せっかく、カラオケに来てるのに氷がぶつかり合う音だけが耳に響く。
ヤバイ………
また涙出そう……。
「はぁー……元気出しなって羽珠」
「無理だよ…。うぅっ…あ、碧依くんに嫌いって言われたぁ〜!!」
「もう分かったから。傷付いたんでしょ?もう、神木のこと諦めなって」
「でも……まだ、好きなのに…っ」
隣に座る皐月があたしの背中を撫でてくれる。
何度も何度も皐月にやめとけ、って言われてたけど、やっぱり碧依くんが好きなんだもん………。
ため息も涙もとまる気配を知らない。
「今日は歌って忘れよ?どうせ、また神木のこと諦めないんだから」
「うん……。じゃ、今日は失恋ソングオンリーで…」
「おっけー。あたしが勝手に選曲しちゃって良い?」
「皐月に任せる……」
「じゃあ〜……これと、この曲と…」
画面に予約表示されるのは、切ない失恋ソングばっか。
自分から皐月に頼んどいて、胸が苦しくなる。
だけど、一番最後に予約されたのは失恋とは程遠い、片思いの明るい曲……。
「もう……皐月大好きー!!」